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航空自衛隊 航空救難団 

航空自衛隊の中の航空総隊に隷属し、自衛隊機の墜落事故などが発生した際、 その機体・乗員の捜索、救助活動を主たる任務とする一方、救助要請(災害派遣要請)にも対応し直ちに活動を開始する『航空自衛隊航空救難団』。 その救難錬度の高さから「最後の砦」と形容される。

 

航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊   

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濃尾平野の北東部、名古屋市の中心から北方約15Kmに位置する航空自衛隊小牧基地は約120万平方メートルの敷地内に8つの部隊、約1,700名の隊員が所属し日夜勤務に励んでいる。愛知県が管轄する県営名古屋空港滑走路を使用していることもあり「地域との共存共栄」ということを念頭に基地運営がなされているのが特長である。

航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊

救難救助の最高峰、メディック

この「出動せよ!救難」は、日本各地の航空救難団の部隊を巡り、それぞれの部隊の特色や装備品・資機材などを紹介していく企画である。シリーズ第一回目となる今号では救難員にとってもスタート地点である「救難教育隊」を特集するが、まずその前に救難員という職域についてここで触れておきたい。

航空自衛隊の救難員を表すメディックという言葉の語源は、戦場でパラシュート降下を行なう医療技術を持った衛生隊員“Paramedic”に由来する。メディックの主たる任務は、有事の際、戦闘により墜落しベイルアウトしたパイロットを救出するコンバットレスキューである。この為メディックは優れた救助能力のみならず戦場で自身が生き抜くためのサバイバル技術を有していなければならないが、彼らは自衛隊の中でも最も過酷な訓練で知られる陸上自衛隊レンジャー課程を優秀な成績で修了している。

メディックの養成については、志願者が部隊内で選抜され、一年に一度しかない「救難員選抜試験」という大変厳しい体力・泳力測定に合格する必要がある。そして試験に合格した数名のみが選抜され、およそ1年にわたる教育と訓練が行われる。

航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊

この教育と訓練は熾烈を極め、候補生達は極限まで追い詰められた状況の中であらゆることを学んでいく。

体力基礎訓練、航空機基礎知識、登山知識、保命技術、救出技術、さらには自衛隊病院内での応急処置訓練や陸上自衛隊第一空挺団での落下傘基本降下訓練までもが盛り込まれている。これら全ての課程をこなした上で、海上総合実習、夏期山岳総合実習、冬期山岳総合実習をクリアし、ついに各部隊に配属されることになる。

だが部隊に配属されたからといって直ちに救難任務に出動するわけではない。OR(Operation Readiness)という専門の資格を取得するまではさらなる厳しい訓練が続き、ORを取得したあとには陸上自衛隊空挺レンジャー課程なども経験し、一歩一歩メディックとして必要な技能を身に付け一人前になっていくのだ。

その基礎教育を行うのがここ小牧救難教育隊であり、ここには救難隊が普段使用している多くの装備品・資機材が揃っている。では、あらゆる極限の状況下で活動するメディック達はどのような装備品を使用しているのか。救難教育隊中尾二等空曹に施設内を案内していただいた。

メディックが備えるべきものとは?

まず初めに案内してもらった場所は落下傘調整室といって、メディックの主要装備品である落下傘を広げて調整や手入れをする場所である。こちらではこの広いスペースを器材庫として利用している。

そこは私たちが想像していたよりもはるかに広く、ありとあらゆる分野の装備品が整然と格納されている様子に驚かされる。山岳登はん用品から海難救助用のダイビングスーツ、ダイビング用品一式、落下傘、落下傘降下用の装備品と、さすがは高度3000mの高所から海の中までを活動領域とするメディックならではの器材庫である。

入校してくる救難員候補生たちはこれら多くの装備品を使いながらその使用方法を学び厳しい訓練に臨む。ちょうど部屋の奥に目を向けると4名分の未開封のダイビングスーツがきれいに並べられていた。これらは翌週から入校してくる候補生達のものだという。

まだ真新しい装備品はまるで、これからメディックになる若い候補生達を静かに待っているように見えた。

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次に、別棟の救難用器材庫に場所を移し引き続き見学をさせてもらう。

こちらの器材庫にはスキー板、ストック、板を手入れするための道具、ゴムボートやエアーコンプレッサーなどが置いてあり、また、登山用品店のようにカラビナやスリングなどのクライミング用品がずらりと壁に掛けられていた。

ここではスキー板やその他の器材の調整なども行う。いかなる時でも装備品を万全の状態にしておくため、日々の手入れは大変重要な任務の一つである。

そして最後に案内していただいたのはUH-60JやU-125Aなどの救難機の格納庫だ。ここにも装備品が置かれており、出動の際すぐに救難機へ乗り込めるようあらかじめ必要な装備品を持ち運びやすい大きさのボックスにまとめたアラート器材セットや、ヘリからの吊上げ救助で使用するサバイバースリングなどが準備されている。

そして装備品ではないがここで特に目をひくのはスポーツジムのように設置されたトレーニングマシンの数々だ。超人的な肉体と体力を維持するため候補生達は日夜ここで体力トレーニングに励んでいる。

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今回拝見させていただいたのは施設内のまだほんの一部にしか過ぎず、メディックの多岐にわたる装備品の全てを紹介することはできなかったが、それでも、この紙面を通じて救難救助の最高峰といわれる航空救難団の装備品を少しでも紹介できた意義は大きいと思う。

今後はさらに、これら一つ一つのアイテムに焦点を当てクローズアップしていきたい。そしてもちろん、ここで不撓不屈の精神を養い、数多くのことを学び、それぞれの部隊へと羽ばたいていったメディック達の活躍もおおいに取り上げていきたいと思う。
(2012.2)

航空自衛隊 航空救難団 救難教育隊の皆さま、取材へのご協力ありがとうございました。

 
 
 
 
 
 
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